プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第78回 番外編

豊富な知識が良い行いにつながる
 ~信頼される企業のために職場教育のより一層の充実を

今回は番外編です。筆者は横浜市に住んでいます。2年前からマイカーをやめました。ここは公共交通が充実しているので、筆者の日常生活にはクルマが無くてもほとんど不都合を感じません。クルマが必要なときはレンタカーを利用しています。これも、近くに営業所があります。レジャーの長距離ドライブや短時間の荷物運搬など目的に合わせて、この営業所でいくつかの車種を利用しました。今回は、レンタカー営業所で感じたことから職場教育について述べることにします。

【1】明るくてきびきびした対応
いつもネットで予約しています。約束した日時に行くと、受付からクルマの引渡しまでムダが無くきびきびした対応は好感がもてます。ネットで注文した内容どおりのことがきちんと実現されています。自分で運転したことが無いクルマを扱うとき、まごつくことが多いのはETCカードのスロット位置です。これをたずねると、担当者はすぐにわからなくても2~3箇所をさわってすぐに教えてくれました。それから、クルマによっては「ETCカード」とかなり大きな表示ラベルが貼り付けてありました。この表示ラベルは、質問に対応するための現場からのカイゼン提案かなと思いました。この提案はクルマによっては実行できないものもありますが、組織としてカイゼンの雰囲気を感じました。しかし、あれ?と疑問を感じることもいくつかありました。

【2】シフトレバーのBは何のこと
オートマチック車のシフトレバーの記号は、これまで筆者が体験した限りでは次のような表示でした。

P-R-N-D-L (Parking-Reverse-Neutral-Drive-Low)


あるとき借りたクルマでは、Lの代わりにBがありました。位置からしてL(ローギア)と同じ働きをするものだろうと思いました。念のため、聞いてみました。すると答が無い!「聞いてきます」と言ってやや先輩らしい人がやってきました。その方は「ブレーキ(Brake)のBです。坂道などで使います」と説明してくれました。
これを知らなかった担当者はまだ経験が浅かったのでしょう。とはいえ、一般のドライバーにおいても普通の走行ではDレンジを使う、坂道ではローギア(LまたはB)レンジにシフトして運転することは教習所で教わる基礎知識です。レンタカー会社で仕事をするにしては知識レベルが貧弱過ぎます。組織として基本的な教育を全くさぼっているのではないかと疑ってしまいました。あるとき、このような「無教育」とは異なる別の問題に遭遇しました。その前に、良いことも発見したのでまずはそれを述べます。

【3】燃料代計算の仕組みがとてもわかりやすい
レンタカー燃料代の精算はユーザーがガソリンを満タンにしてから返却するやり方が一般的です。別のやり方として、ユーザーの走行距離に応じて規定の燃費(燃費率)で燃料代を支払うこともできます。筆者はいつも後者のやり方で燃料代を支払っています。ガソリンスタンドが混み合うと、その待ち時間がもったいないからです。

あるとき借りたクルマ(A車)は、走行区間の平均燃費が自動的に表示されるハイブリッド車でした。走行距離が330KMで、その平均燃費が22.0KM/Lと表示されました(・・数字は丸めています)。これを逆算すれば使用したガソリンは15.0Lとなります。ガソリンの単価は市況によって変化します。その時点でこのレンタカー会社が決めたガソリン単価を使って請求するのでしょう。燃料代請求の仕組みがすっきりしていてわかりやすいですね。このクルマは燃費をユーザーにも共有できるようにして、かつレンタカー会社もその数値をそのまま使って請求する。きわめて合理的な仕組みです。ところが、別のクルマを借りて返却したとき、ひとつの質問で筆者はクレーマーになってしまったようでした。

【4】燃料代計算の仕組みをまるで理解していない
べつのクルマ(B車)を借りました。B車はたんに走行距離が表示されるだけでした。燃料代の請求を含む書面をもらいました。走行距離と燃料代が記載されていました。このB車の燃費を知りたくて「B車の燃費はどのくらい?」と質問しました。質問の意味がわからなかったようでした。「請求された燃料代に疑問があるわけではなく、会社で設定した燃費が知りたいだけ」と説明したのですが、それでも質問の意味がわからなかったようでした。彼がパソコンに入力したのは、筆者が借りたB車の走行距離だけだったのでしょう。しかし、燃料代を計算するにはB車の燃費とガソリン単価が必要です。それらは規定値として既に入力されているはずです。彼は教えられたとおりの手順をやっただけ。筆者の質問は想定外のトラブル。こういった状況のようでした。
少し離れた席にいた別の方が「クルマの燃費は国交省へ届け出たものがあり・・」と筆者に説明されました。そういう知識はあったようですが、それでも「レンタカー会社で決めた規定の燃費がある」ということはやはり理解されていないようでした。お二人にとって筆者は「何に文句をつけているのかわからない嫌なクレーマー」になっていたようです。早々に引き上げました。

【5】商品知識を増やすことが良い行いにつながる
レンタカー営業所での体験から、筆者は次のように考えます。マニュアルにある必要最小限の知識だけでは顧客の信頼を得るどころか、ちょっとした質問にも満足に応えられない。担当業務については商品知識をさらに深める。また、担当業務外であっても自社のホームページに記載されている情報は知識として自分のものにしておく。

知識を増やすことが学びの第一歩です。学びがあれば自然に良い行いにつながります。このような観点から、職場教育のより一層の充実をはかることができるのではないでしょうか。