プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第65回

テレワークで少数精鋭を目指す(その3)

前回は、テレワークのための前提は職場の規律であること、そしてそのためには5S活動のようなものが欠かせないことを述べました。また、日常業務の基本は進ちょく管理であることから、プロジェクトの三つの制約条件を参考にしながら、プロジェクトと通常業務の差異をみました。
プロジェクトの「いつもと異なる特別な目的」を除けば両者の差異はあまり無いとしました。しかし、ひとりで働く職場には空気感が無いことを充足する課題がありました。対処策のひとつは組織のマネージャーが日常業務をどう評価するか、その姿勢でした。もうひとつは上司や部下などに関わらず働き手として仕事を掘り下げる姿勢でした。今回は、その続きです。テレワークで少数精鋭を目指す道を進むための準備について述べます。

【1】テレワーク実践状況をイメージする
テレワークでの情報のやり取り状況について、前回のトップ画像からイメージしてみましょう。

図 テレワークでのやり取り


図の左側の上から順に、吹き出し二つずつがセットになっています。

①定例の業務報告
②緊急事態発生への対応
③追加や変更に関する業務

これらについて、実践状況を解説します。

①定例の業務報告
まず上司から前日の業務報告についての評価があります。これには注意事項も含まれています。評価と注意事項を確認しながら作業開始となります。

②緊急事態発生への対応
想定外の緊急事態発生の場合はその対処が必要になります。まずは自ら状況確認を行います。自分で判断して良い場合は、対応策を実行部署に指示します。緊急事態が終息するか、または決着をみたら対応を終了します。一件落着ですが、終息や決着の判断基準は社内規則に従います。

③追加や変更に関する業務
定例業務においても、追加・変更依頼は必ず発生します。材料の数量を追加したり、その納期確認を行います。業務に関わる納期変更は関連部署が複数にまたがるので対応連絡でミスが発生しやすい傾向があります。ミス防止のためにチェックリストを準備するより、専用書式を用いるほうが安定した業務プロセスになります。

【2】実践のために準備すること
テレワーク実践の有無に関わらず、ミスの無い業務プロセスのためにも準備することがあります。

①定例の業務報告
定例業務の場合は類似した案件が多くなります。従って、報告は書式を工夫して一定のパターンにする必要があります。表形式にするなど全体を一覧できるようにして、業務ごとの進ちょく状況がすぐにわかるようにします。

②緊急事態発生への対応
緊急事態ですから、定例業務ではありません。めったに無いことは対応にまごつきます。丁寧なマニュアルが欠かせません。マニュアルはベテラン(経験者)が作成することになりますが、あくまで初心者向けであることが前提になります。
マニュアルは行動手順になりますが、前述したように社内規則も必要になります。自らやってよい業務範囲や終息・決着の判断基準などです。また、事前に報告のための書式を作成しておくことも必要になります。社内にある何らかの類似ケースを参考にしてもよいでしょう。

③追加や変更に関する業務
これはプロジェクトマネジメントの「変更管理」に相当する業務になります。発生頻度としては定例の業務よりは少ないものの、緊急事態よりもはるかに多く発生します。従って、申請や依頼に関する業務プロセスを明確に決めておく必要があります。同時にその書式は専用にします。前述したように、「変更」はミスやカン違いを誘発しやすいプロセスです。ミス防止と同時に安定した業務プロセスの実現をはかることが重要です。明快な専用書式はその一環となる重要ポイントになります。
変更管理の報告書は(その内容は主として分析結果になりますが)定期的に発行されるべきと考えます。なぜ変更が必要になったのか、変更結果の評価や変更に関わるコストなどを記述します。これにより、変更や変更管理がミニマムになることを狙います。

【3】テレワークに適用できるプロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、仕事の正しい進め方という合理的な側面があります。ここに着目してテレワークを円滑に実践するためのヒントになることを紹介します。

作業分解(WBS Work Breakdown Structure)
大きな仕事はいくつかのまとまった単位の作業に分割できます。
完了基準(終了基準)
仕事や作業をどこで終わらせるか、あらかじめそれを決めておきます。仕事や作業だけでなく、プロジェクト全体にも設定できます。
変更管理
作業内容の変更やあらたな作業の追加などは「変更管理」としてフォローします。変更には基点となるものがあるはずです。基点も明確にします。
基準計画
プロジェクトを開始するときその基点を明確にするための計画全体は基準計画と呼ばれています。プロジェクトが終了したときは基準計画に対応するものとして「プロジェクト完了報告書」があります。


また、プロジェクトマネジメントの基本として重要な前提があります。

・属人的でないこと 担当者であれば特別な知識や経験無しで作業できるテレワークでとくに必須の前提もあります。
・作業がひとりでできること 二人作業などではテレワークに適合できない


【4】テレワークで必須の文章作成スキル
スキルとは知識をもち、それを実践できることです。知識と実践がそろって初めて、スキルと言えます。
テレワークでは、記録し文章化することが必須となります。言語の学びは、聞く→話す→読む→書くという順序になります。日常生活では聞く・話すができればそれなりのコミュニケーションができます。しかし、テレワークとなると「書く」がきわめて重要になります。

文章力をつけるにはどうしたらよいか
「文章力検定」などもあるそうですが、最初は文章に親しむことから始めるのが良いでしょう。好きなジャンルの小説や専門書などを見つけ、その方面の本なら苦にならずに読めるようになる、まずはこのようなことを目指します。テレワークは今後のビジネスで大きな潮流になるのは時間の問題です。読者の皆さんの職場がテレワークを現在は実践していないとしても、文章力は必須です。今すぐ自分に適したやり方で取り組みを始めましょう。

テレワークであらたなスキルが開発される
プレゼンに苦手意識をもつ人がありました。パワポ資料を投影してよどみ無くプレゼンする、誰がやってもけっこう難しいことです。こういうことを含め、口頭で伝えることに苦手意識をもつ人でした。職場へのテレワーク導入で、この人は一変しました。業務報告や変更管理などテレワークの基本を充実できたことが、従来の苦手意識をすべてクリアさせました。これに伴い口頭での業務伝達も淡々と実践できるようになりました。この大きな変化はあらたなスキルの開発に相当すると筆者は感じています。