プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第25回

テレワーク時代こそ5Sを活かす

前回は、テレワーク時代に要請される本質的な変化について述べました。変化のための対応は、全く新しいことではなく従来取り組んできたこと、つまり「業務の見える化とプロセスの質的レベルアップ」でした。この取り組みは、製造現場でこれまで継続してきた5S活動のホワイトカラー組織への適用と考えることができます。5S活動であれば、製造現場にはこれまでの実績と経験があります。これらを活かすことによりホワイトカラー組織へ円滑に適用する道筋が見えてきます。
変化に対応するための具体的な課題として「プロセスの見える化のための業務マニュアルの充実」を、前回とり上げました。その理由をあらためて確認することにします。

【1】なぜ、業務マニュアルの充実が必須となるのか
中小企業の特徴のひとつに過小人員があります。製造業であれば、設計、生産、販売などの主要部門ではキーパースンを中心に相応の人員をかかえています。ところが主要部門以外の部署となると、担当者はひとりだけあるいは複数部署の掛け持ちという状況もごく普通に存在します。そのような場合、その担当者に何かあれば企業全体の機能に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。テレワーク環境でなくても、前回述べた次のような目的は必須となります。
・業務の引継ぎや移管を容易にできるようにする・・複雑な作業の分解、難作業の解消、改善
・業務プロセスの安定性を維持・向上させる・・プロセスの明文化、結果の均一化
さらに、次の目的は5S活動に取り組んでいない部門では、見過ごされがちになります。
・業務プロセスの健全性を確保する・・非効率な作業や難作業の解消、改善
人事・採用、労務、法務、情報、購買などの担当部署で、いったんトラブルが発生するとその対処や是正措置のために大きな時間と労力をかけざるを得なくなるでしょう。テレワーク体制になっても、属人性や業務プロセスの難作業がそのまま残っていると大きなトラブルの要因をかかえたままになります。

【2】業務マニュアルの充実を5S活動で展開する
業務マニュアルというと、初心者向けという理解が一般的です。一応、初心者がマニュアルの使用者としても、作成する人は経験者に限られます。経験者は、自身にマニュアルが不要であっても、使用者のレベルを意識しながらマニュアルの記述・改訂を続ける必要があります。使用者は、マニュアルの内容を確かめながら自らの仕事をチェックしつつ仕事の質を高めることで、経験者(作成者)へのレベルアップを目指します。
次に製造現場における5S、ホワイトカラー職場で展開する5S、それぞれの意味を示します。


製造現場の5S活動は、整理・整とん・清掃という作業を徹底して継続することにより、職場の規律を生み出す優れたシステムです。このシステムは命令で行動を強制するのではなく、あくまで自主的な活動を継続することが基本となっています。

筆者は、これが世界のどの国にもない日本独自の大きな強みと考えています。その基本的な考え方は、わが国のどのような組織にも適用でき大きな成果につながると確信します。テレワーク時代こそ5Sシステムを適用し組織の自主性・自律性を高めて圧倒的な経営生産性の向上を図る絶好のチャンスとなります。