プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第10回

進ちょく会議を責任追及会議にしない

前回は、成功のための3つのカギとして、目的~最終成果物~見える化などを説明しました。プロジェクトに限りませんが、何ごとにもやってみてうまくいかなかったときは次のような二つのパターンがあるように思われます。
パターン(1)
計画したとおりに実行できたが、出来上がってみるとあまり役に立たなかった。これは、目的や最終成果物の設定が的外れだったということになります。もうひとつ、これとはほぼ逆のパターンもあります。
 
パターン(2)
狙いは的確で計画にヌケやモレは無かったのに、実行段階で上手くいかなかった。納期遅れや成果物の出来栄えがいまひとつだった。
二番目のようなプロジェクトの失敗をしないために、プロジェクトの進ちょくをどうマネジメントしていくか、今回はごく普通に開催されているプロジェクトの進ちょく会議についてです。
 
プロジェクトに限りませんが、どのような業務であれ予定どおりに進ちょくしているか、大きな遅れは無いかをチェックするために進ちょく会議があります。チェックのためには必ずしも「会議」の必要は無いと思いますが、従来から管理者にとって欠かせないイベントになっています。それは、進ちょく状況について疑問・質問があり、現状への対処が必要かどうかを判断する必要があるからです。テレワークが導入されても、進ちょく会議はオンライン会議として当分の間は継続することになるでしょう。
 
筆者がここで取り上げたいのは、進ちょく会議は「責任追及会議」になりやすいという特徴があるからです。進ちょくの遅れや発生した問題について、リーダーとしてはメンバーの説明をじっくり聞くというより質問に偏りがちになります。事情がわからないので聞いているのですが、質問される側としては「詰問」されている感じになります。つまり、責任を追及されているように感じます。こうなると、重要な情報や問題の真の原因などが素直に語られることは難しくなるでしょう。
 
そこで、リーダーとしては、進ちょく会議を責任追及の場ではなく、問題解決の場にすることが欠かせません。例えば、リーダーとしては質問よりも傾聴の割合を増やすことを心がけることも必要になるでしょう。ただ、傾聴ばかりでは解決の糸口が見えてこないので、一歩踏み込んだ質問から解決に発展させる対話力も必要になるでしょう。
 
社内プロジェクトでは、毎日プロジェクト活動をやるわけではなく定期的に活動日を設定する
ことが多くなります。この場合は、進ちょく会議はあえて設定せず、問題解決の場を設けることが適切でしょう。進ちょくについてはスケジュール遅れを討議項目のひとつとして含めます。主な項目として、既に起こっている問題と近いうちに起こりそうな問題とをとり上げます。近い将来の問題は、プロジェクトの成功を危うくするリスクになるかもしれないからです。
 
プロジェクトメンバーの定期的な集まりを、積極的に問題解決の場にすることには大きな意味があります。そもそも何が問題なのか、将来何が問題になりそうかを集中して考えることはプロジェクトの場合にはとくに重要になります。プロジェクトは定常業務とは目的や最終成果物が異なります。従って、最初に決めたプロジェクトの目的や最終成果物がぴったり的を射ているかは、つねに確認する必要があるわけです。
 
比較表 よくある進ちょく会議と問題解決の場

 
本稿の最初に述べたように、プロジェクトの失敗パターン(2)、実行段階で上手くいかなかったパターンは組織の実力不足ということになります。体制を整えて再チャレンジすることになるでしょう。
プロジェクトの失敗パターン(1)、計画したとおりに実行できたが、出来上がってみるとあまり役に立たなかった、目的や最終成果物の設定が的外れだったという失敗は、もったいないと言わざるをえません。この失敗は、目的や最終成果物をつねに確認・チェックすることで防止できます。二つのパターンとも、社内プロジェクトでは通常の進ちょく会議ではなく、問題解決の場とすることが欠かせません。