プロジェクトでカイゼン [Project de Kaizen] 第5回

プロジェクトの成功に絶大な威力を発揮する「見える化」とは

前回は、プロジェクトのスケジュールを立てる前にやるべき必須のこととしてプロジェクトの「背景文」を説明しました。背景文にはそのプロジェクトにかける「熱い思い」がこめられています。プロジェクトの終了時に出来上がっている成果物は、その思いをしっかり実現していないと成功とは言えません。背景文の次にやることとして、プロジェクトの成功に絶大な威力を発揮するものがあります。
 
それは「プロジェクト全体像の見える化」です。
 
すべての関係者間でプロジェクトの全体像が見える化できている。これはじつに重要なことです。難航プロジェクト、これはあるところまでは進めてきたが次にどうすべきかわからなくなったプロジェクトのことです。このようなプロジェクトの支援を筆者はいくつか経験してきました。共通していることは、プロジェクト関係者が全体像を把握できていないことでした。当然のことのように、こういうプロジェクトでは目的や狙いもあいまいなことがよくありました。
難航プロジェクトに着手するとき、筆者はつねに背景文→全体像の見える化、という手順を重視して進めました。これで必ずと言ってよいほど解決することができました。つまり、全体像の見える化をやっておけば、プロジェクトは難航せずに安定した航海を続けられるという大きな効果が得られます。さらに、計画策定時において全ての関係者からさまざまな見解や知恵を集められるという特長があります。よく「総力を結集する」と言います。これに近いこと、つまり、直接の担当ではない人たちの知恵を引き出すことができます。もちろん、リーダーのスキルによって同じ結果を出すこともできるでしょうが、全体像の見える化があればリーダーのスキルに関係なく良い結果が出るように感じます。
 
全体像の見える化のために、「サクセスマップ」というやり方を説明します。
これに着手する前に背景文(500字程度)が必要ですが、本稿では背景文は不要なシンプルな事例で説明します。営業担当者が、新規の客先で販売促進のために商品説明会を開催するという事例です。
 
【背景】
顧客から説明会開催の承認をもらった。開催は約1ヶ月先である
顧客会議室で関係者約20名が参加する。こちらは私ひとり
重要顧客なので私としてはぜひとも成功し商品受注につなげたい
商品説明会については社内で決まったやり方があるが少し変えたい
 
こういう状況をプロジェクトとして、サクセスマップを描くと図1のようになります。顧客から説明会開催の承認をもらったとき(開始時点)から、最終成果物(商品受注)に至るまでのプロジェクトの全体像を描きます。これを見るとまずは何を準備すればよいかがわかります。ここでサクセスマップのつくり方について大事な点を述べておきます。 
 
【つくり方のポイント】
①すべてのハコは成果物のかたちで記入する(作業のように「~する」とはしない)
②まず最終成果物から開始時点に向かってつくる(時間の流れとは逆方向)
③ハコの数は目安として10~20程度にとどめる(大きなプロジェクトの場合は
期間を1期、2期などと分割しハコの数が20程度をこえないようにする)
 
図1 サクセスマップ

 
ところで「見える化」について、たんによくわかったということだけでは不十分です。
製造ラインでライン停止の見える化はカイゼン案件の定番として採用されています。ここで赤信号が点灯したら、すぐに駆けつけて対応します。つまり、赤信号にはそれに対応した行動がセットになっています。サクセスマップによる見える化も同じです。プロジェクトの全体像から、自分の担当する作業について前後の作業はどうなっているか、全体的な位置づけがわかります。例えば、自分の作業も含めある作業が遅れたらプロジェクト全体にどういう影響があるかの気付きが得られます。そうすると自分がどんな行動をとるべきかの指針となります。

プロジェクトのスケジュールを立てる前に背景文が必要、背景がわかったら次に全体像の見える化をやりましょうと説明してきました。見える化のためのサクセスマップとスケジュールを比較してみましょう。スケジュールとしては、前回紹介したガントチャート(図2)です。それぞれプロジェクトの内容は異なりますが、全体像の見える化のためにはスケジュール表(ガントチャート)は全く不向きであることがわかります。また、サクセスマップをつくっておくとスケジュール作成のときにヌケモレを無くすことに効果的です。サクセスマップの使い方については、次回ご紹介します。テレワークなど、プロジェクト以外の通常業務でも効果的に使うことができます
 
図2 ガントチャートの一例